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愛し愛され
第3章 腰元のVサイン


不思議だ、と彼は思った。

三〇台を終えようとしている自分は、二〇代も半ばの女性をこんな風に笑わせることなど、できるわけがないと思っていた。彼女達が好む音楽や、流行のことなど何ひとつ知らない自分。仕事上の接点もないので、共通の話題など、何ひとつとしてなかった。彼自身はホステスのいる酒場に通うような習慣もなかったので、本当に、年若い女性は彼にとっては全くの謎だった。

しかし。

初めて会ったパーティー会場で彼女を笑わせた後、とても気軽な気持ちで、彼女を食事に誘うことができた。

クリスマスが開けて、大晦日になる直前の日々の中で、彼は彼女とはじめてデートをした。心の中でひそやかな緊張を持って望んだデートだったけれど、彼はその時も、彼女を上手くエスコートすることができた。

結局相性なのだ、と昔から多くの人がいう真実に、彼もたどり着いた、というわけだ。

ゆっくりした食事のあいだ、彼はリラックスして彼女と話すことができた。年若い彼女もまた、彼の話に興味を持ち、そしてまた、自分の話しを多く語った。彼らは自然と引き合った。冬になると雪が降るように。雪が積もれば子ども達が雪だるまをこしらえるように自然に、彼らはセックスをした。

「まるで映画みたい」と、最初のセックスの後、年若い彼女は言った。視線を絡めるだけでストーリーが始まり、出会いの偶然は必然だったのだと、ふたりして信じた。


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