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愛し愛され
第1章 階段室にて


上層階の、高級すぎないフレンチで、ふたりで楽しくワインを開け、カジュアルなコース料理を食べた。
会話は弾み、さほ子の心が開くのを、博人は好ましく感じた。

このディナーでさほ子との関係が決定的に変化する(例えばさほ子と寝る、というようなこと)が起こるとは、さすがの博人も考えてはいないけれど、もちろん心のどこかでそういった期待がなかったといえば嘘になる。
しかしフレッシュな二〇〇七年の白ワインを飲みながら、さほ子の話す四方山話に、博人は夢中になった。

最初の結婚のこと。そしていまのずいぶん年上の夫のこと。お料理教室での出来事や、子どもの教育の話。得意な味噌汁の話。博人はそのどれもに深く興味を覚え、上手にさほ子をうながした。博人には全く自覚はなかったが、適切な質問をし、余計な私見を挟まず、さほ子の喋りたいように、のびのびと自由に話をさせた。

さほ子はその、いまの自分の気分にピタリと合致する聞き手を得て、さまざまな話をおおらかに繰り広げていった。
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