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愛し愛され
第7章 夕暮れのくちづけ

旧市街の路面電車に乗って、さほ子と博人は海を見に行くことにした。
金曜日の午後。ランチでもなく、ディナーでもない時間を、博人はあえてリクエストした。午後の中途半端な時間は、さほ子にとっては都合が悪い。下の子の、幼稚園のお迎えがあるからだ。さほ子が何を思って彼と会うことを求めたのかはよくわからない。わからないけれど、彼の中ではもう、さほ子に深くかかわりを持つことはできない、と結論付けられていた。だから彼は、あえてさほ子が長い時間を捻出しづらい時間を指定した。
さほ子は幼稚園に連絡をし、予定よりも二時間の延長保育を依頼した。朝から浮き足立ちそうになる自分を戒めながら、冬の装いで彼女は家を出た。
暮れも近づく年の瀬の街。あちこちにクリスマスの飾りつけの見えるショーウィンドウを過ぎて、路面電車は波止場前の終点に着いた。
ふたりはそこで電車を降り、石畳の波止場の公園を歩いた。
クリスマスのプレゼントに何を選ぶかを、ふたりは話しながら歩いていた。新市街の洒落た百貨店の中に入っている、小さな和装店の小物の魅力について、さほ子は熱をこめて語った。博人はさほ子にプレゼントを贈るとしたら何かを考えながら、彼女の話を聞いていた。

