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愛し愛され
第8章 愛し愛され
「ママー」と、下の子がさほ子を呼ぶ。
見ると、彼の口の中で、ジャガイモが溢れそうになっていた。
さほ子は彼の口の下に右手を差し出した。
「出していいのよ」
と彼女は言った。息子は舌でジャガイモを押し出した。
固まった表情を解いて、子どもに手を差し伸べるさほ子。
小さく微笑んで、やさしく甘い顔になった彼女。
あぁ、そうか、と博人は思う。
と、クラクションが背中で鳴った。
見ると、信号が青になっていた。
博人はあわててシフトを入れると、ギアをつなぎ、オープンカーを発進させた。
舞台から去りながら彼は、さほ子のその美しい微笑に安心していた。