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愛し愛され
第8章 愛し愛され
「ママー」
と、息子が呼ぶ。
ほぼ食べつくしてしまったカップのなかに、彼にはすくえない幾つかのスープの実(ベーコンやあさりや玉ねぎやジャガイモといった、大切な脇役達)が残っていた。
さほ子は下の子からスプーンを借りると、そのひとつひとつをすくっては、息子の口に入れてあげた。
さよなら、と、さほ子は心の中で言った。ありがとう、と、そしてつづけた。
愛し愛されたこともすべては、一杯のクラムチャウダーに回帰するのだ、とさほ子は思った。
〈了〉