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Beautiful Smile~不器用な愛~
第17章 【短編】涙夜ーナミダヨルー【GL】
***
朝、九時すぎ、ミキの部屋を出る。マンションの階段を降りるとき、真面目そうな黒縁メガネをかけた男の子とすれ違った。男の子はペコリとお辞儀をした。ふわっと流れてきたのは、たまにミキからもする香水か柔軟剤の香り。
マンションを降りて、晴れ渡る空を見上げて溜め息を吐いた。報われない恋ばかりしてしまうのは、きっと産まれながらの私の罪。
たった一度の結びは、一生で一番幸せで切ない瞬間だった。ずっと続けばいいのに。本気でそう思ったけれど、ずっと続く時間なんてない。時間の進み方だけは、皆、平等なのだ。
ずっと生きていても幸せになれる。報われる。そんな保障なんてどこにもない。
きっと暫くは、今日も明日も
“涙夜―ナミダヨル―”
それでも私は少しの希望を信じている。
この空が碧いように、いつかきっと――。
Fin.