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口琴
第7章 蠢く幼い指
聖の存在は、小さな炎。
それは、とても小さな小さな炎だが、まるで篝火のように、暗闇の中の"蕾"と言う存在を明るく照らし、その和かな温もりは、蕾の心を優しく温めた。
この小さな炎は、蕾の胸の奥で静かに揺らいでいた。
あの日以来二人は、幾度となくあの木陰で遊び、別れ際はいつも「またね」と言うだけで、いつ会おうとも、何時に会おうとも約束することはない。
なのに二人は、まるで見えない糸で引き合うようにそこにいた。
会えば必ず、聖は蕾の為にハーモニカを吹き、蕾もまたハーモニカに合わせて歌を歌った。
幼い二人の小さな胸の中には、"恋"だと言う自覚の無いまま、少しずつ、そして確かにそれは育っていた。
ある日北川から、中條の帰国が延期されたとの連絡があり、蕾は安堵していた。
いっそ、永遠に帰国しないで欲しい。
相変わらず敬介は横暴だが、適当にあしらってやり過ごせば、何とか母娘で庇い合いながら暮らすことができた。
そして、夏休みも半ばになろうとしたある日…。
それは、とても小さな小さな炎だが、まるで篝火のように、暗闇の中の"蕾"と言う存在を明るく照らし、その和かな温もりは、蕾の心を優しく温めた。
この小さな炎は、蕾の胸の奥で静かに揺らいでいた。
あの日以来二人は、幾度となくあの木陰で遊び、別れ際はいつも「またね」と言うだけで、いつ会おうとも、何時に会おうとも約束することはない。
なのに二人は、まるで見えない糸で引き合うようにそこにいた。
会えば必ず、聖は蕾の為にハーモニカを吹き、蕾もまたハーモニカに合わせて歌を歌った。
幼い二人の小さな胸の中には、"恋"だと言う自覚の無いまま、少しずつ、そして確かにそれは育っていた。
ある日北川から、中條の帰国が延期されたとの連絡があり、蕾は安堵していた。
いっそ、永遠に帰国しないで欲しい。
相変わらず敬介は横暴だが、適当にあしらってやり過ごせば、何とか母娘で庇い合いながら暮らすことができた。
そして、夏休みも半ばになろうとしたある日…。