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イカせ屋稼業
第11章 そのじゅう
『ちょっと、
事務所に寄るからな。
それから撮影場所に向かう』
甲斐は時間を見て、
事務所に寄ってふたりをどうにか仲直りさせようと思い付く。



『はーい…』
『へい…』



(あーらら……)

いつも元気よく揃う「『はーい』」が、
ズレているうえ重い。


甲斐は車のスピードを上げた。



〔ミントリア〕事務所があるビルに着く。


ふたりは降車したあとも離れて歩き、
重い空気が変わらない。

甲斐は『拓矢、ちょっと来てくれ。怪我のことで話をしとこう』
と拓矢だけを呼び止めた。

『翔汰、
社長のトコでコーヒーでも飲んでてくれ』


翔汰は頷き、
1人でエレベーターに乗り込んだ。




『拓矢〜〜〜』
甲斐は拓矢の肩を組んで駐車場――地下だ――の隅に引きずる。

拓矢はぶっす〜っとしたままだ。


『おい、何があった?
お前ら喧嘩してるだろう』甲斐が詰問する。

拓矢は目を伏せ気味にしている。
『仕事なんだぞ?
喧嘩はあっても、切り替えなきゃプロじゃないだろ』甲斐が言うと拓矢は顔を上げた。

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