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イカせ屋稼業
第11章 そのじゅう
―――イージーは、
カメラをズームしてシミを撮る。


息が荒いのはイージーも同じだった。
但しコチラはカメラマンとしての興奮だけど。


(あんたたち、
「どう映るか」を頭で考えずに〔魅せる〕ようになったのね………!

――大丈夫だわ、
あんたたちなら。
どんな悪どい事務所相手にも負けないわ。
アタシは信じてるわよ)



イージーは、
写真撮影・映像撮影………たくさんの写真や映像を世に送り出してきた。

何千何万人撮ったか知れない。


そのなかで、
「輝いたまま生き残る人」というのはどういう人か知っている。


「こうしたら良く見える」「こうポージングすればキレイに映る」
………皆最初はぎこちないし、
頭で考えながら慣れていく。もちろんそれもとても大切なこと。


が、
本当の表現者は頭で考えずに感覚になっているのだ。

集中力と、研ぎ澄まされた感覚。

スタジオの空気を一蹴してしまうくらい、
魅せることができる人は一握りだ。
そしてそういう人たちに共通しているのは、〔普段は本当に普通〕ということ。逆に言えば普段から表現が板についてるのだ。

(百合絵、
大丈夫よ……
このコたちはアタシたちが思うよりもずっと強い表現者だわ)


古くからの知人である榊百合絵に、
エールを送るイージー。
怪しげな事務所の出現に内心穏やかじゃないはず。


だけど、
イージーはふたりを映しながら確固たる信念が湧き出てならない。


無我夢中でカメラを廻す。
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