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君をこんなに愛してる
第4章 空白の記憶
わたしの疑問を受けて
絢人さんは急に口をつぐんだ。
その視線が奥様に移った気がする。
振り返って奥様に聞き直そうかと思ったけれど、なんとなくやめておいた。
「一年前の事は…──」
絢人さんは静かに話を再開した。
「…覚えていなくて」
「…そう」
数年分の記憶がないというのだから、それもそうだろう。
「僕が日本を離れていたという話は両親から聞きました。自分でも不思議な事だけれど、気が付いたらこの街にいたのです。怪我だってしていない」
「それなら、安心」
「ありがとう。ただ…僕はこんな具合に記憶も抜けているし、状況が状況だから、この病院で検査を受けることにしたんです。僕が本当に《 貴峰 絢人 》なのかどうか…──」
そのための検査なのね
わたしは彼の話に納得することができた。