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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第4章 第二話【花影】-其の壱-

父が手を差し出す。大きくて、きれいな手だと、その手を懐かしく見つめた。伊八の手は繊細な簪細工を作るために存在するような手で、指もほっそりとして長い。力強さとしなやかさを兼ね備えた手だ。父の手にかかると、今にも飛び立とうとする蝶や風に揺れる花たちが簪として生命を吹き込まれる。まさに「名人」と云われるに相応しい逸品であった。
お彩は、そんな父を心から誇りに思っているのだ。この手が幼いお彩の頭を優しく撫で、抱き上げて肩や膝に乗せてくれた。お彩は感慨を込めて父を見つめた。大好きな父、尊敬する父。
この人をたとえ一刻たりとも、どうして哀しませるような真似をしてしまったのだろう。そう思うと、今更ながらに苦い悔恨の念が心の奥底からふつふつと湧き起こってくるのだった。
「どうした、お彩?」
お彩は、そんな父を心から誇りに思っているのだ。この手が幼いお彩の頭を優しく撫で、抱き上げて肩や膝に乗せてくれた。お彩は感慨を込めて父を見つめた。大好きな父、尊敬する父。
この人をたとえ一刻たりとも、どうして哀しませるような真似をしてしまったのだろう。そう思うと、今更ながらに苦い悔恨の念が心の奥底からふつふつと湧き起こってくるのだった。
「どうした、お彩?」

