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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第5章 第二話・其の弐

小巻の父親である喜六郎は娘を溺愛しているゆえ、娘のこの気随気儘を見て見ぬふりである。小巻は四年前に小さな仏具屋の若旦那に見初められて嫁いだ。「小町」と呼ばれ、その姿絵が錦絵となって草紙屋に並ぶほどの評判の美貌であった。
しかし、外見と内面はまるで正反対、御仏はどうやらこの娘に一物しか与え給わなかったようで、我がままは言い放題、礼儀は知らずで鼻持ちならない女である。嫁ぎ先の亭主がまた、喜六郎に引けも取らず小巻を甘やかすものだから、小巻は敬うべき亭主の二親をも端から蔑ろにし、亭主は女房の小巻の言いなりという情けない有り様だ。
お彩のことも最初から下女扱いして、〝お彩、お彩〟と平然と呼び捨てにして自分の用をさせるために呼びつける。小巻は嫁いで三年もの間子ができず、これだけが喜六郎のたった一つの悩みであったのだが、去年の秋に妊娠したことが判り、目下のところ、八ヶ月の身重で早々と出産に備えて実家に帰ってきているのである。
しかし、外見と内面はまるで正反対、御仏はどうやらこの娘に一物しか与え給わなかったようで、我がままは言い放題、礼儀は知らずで鼻持ちならない女である。嫁ぎ先の亭主がまた、喜六郎に引けも取らず小巻を甘やかすものだから、小巻は敬うべき亭主の二親をも端から蔑ろにし、亭主は女房の小巻の言いなりという情けない有り様だ。
お彩のことも最初から下女扱いして、〝お彩、お彩〟と平然と呼び捨てにして自分の用をさせるために呼びつける。小巻は嫁いで三年もの間子ができず、これだけが喜六郎のたった一つの悩みであったのだが、去年の秋に妊娠したことが判り、目下のところ、八ヶ月の身重で早々と出産に備えて実家に帰ってきているのである。

