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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第5章 第二話・其の弐

「お彩ちゃん、お前って子は―」
喜六郎が絶句した。
「止めてよ、あんたなんかにそんな風に言われたくないわ。本当におとっつぁんも皆もどうかしちまったのよ。こんな小娘の色香にたぶらかされて」
小巻はまだ悪態をつきながら、部屋を出ていった。障子が荒々しい音を立ててピシャリと閉まるのと同時に、喜六郎が重い吐息をついた。
「済まねえ。甘やかして育てちまったばかりに、とんだ娘になっちまった。お彩ちゃんにもみっともねえところを見せたなあ。何しろ、あいつが生まれたのが死んだ女房と所帯を持って七年目のときだった。挙げ句、女房も腹の子ももろとも死ぬかという難産の末に漸く産声を上げてねえ。女房も俺もあいつの言うことなら、人殺し以外なら、どんなことでも叶えてやりてえと思って大切に育ててきたんだが、どうにもそれがかえって、あいつのためには良くなかったみてえだ」
喜六郎が絶句した。
「止めてよ、あんたなんかにそんな風に言われたくないわ。本当におとっつぁんも皆もどうかしちまったのよ。こんな小娘の色香にたぶらかされて」
小巻はまだ悪態をつきながら、部屋を出ていった。障子が荒々しい音を立ててピシャリと閉まるのと同時に、喜六郎が重い吐息をついた。
「済まねえ。甘やかして育てちまったばかりに、とんだ娘になっちまった。お彩ちゃんにもみっともねえところを見せたなあ。何しろ、あいつが生まれたのが死んだ女房と所帯を持って七年目のときだった。挙げ句、女房も腹の子ももろとも死ぬかという難産の末に漸く産声を上げてねえ。女房も俺もあいつの言うことなら、人殺し以外なら、どんなことでも叶えてやりてえと思って大切に育ててきたんだが、どうにもそれがかえって、あいつのためには良くなかったみてえだ」

