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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐

「ちょっと覗いてから、すぐに帰るつもりだったんだけど、戸を開けたら、いきなりお彩ちゃんが寝込んでたんで愕いたよ」
伊勢次は、いつもよりはやや声を落として話している。それも伊勢次なりの気遣いなのだろう。
「でも、かえって良かったかもしれねえな。熱も高いし、随分とうなされてたようだったから」
「怖い夢を見ていたの」
お彩は先刻の巨大な化け物に追いかけられた夢のことを思い出して、わずかに身震いした。今も夢の中で味わった恐怖感が残っている。
「―怖い夢?」
伊勢次が小首を傾げる。が、お彩はその夢については語る気にはなれなかった。
伊勢次はそれ以上追及してこず、枕許に置いてある盥に浸してある手拭いを取り上げた。丁寧な手つきで絞り、お彩に差し出す。
伊勢次は、いつもよりはやや声を落として話している。それも伊勢次なりの気遣いなのだろう。
「でも、かえって良かったかもしれねえな。熱も高いし、随分とうなされてたようだったから」
「怖い夢を見ていたの」
お彩は先刻の巨大な化け物に追いかけられた夢のことを思い出して、わずかに身震いした。今も夢の中で味わった恐怖感が残っている。
「―怖い夢?」
伊勢次が小首を傾げる。が、お彩はその夢については語る気にはなれなかった。
伊勢次はそれ以上追及してこず、枕許に置いてある盥に浸してある手拭いを取り上げた。丁寧な手つきで絞り、お彩に差し出す。

