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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐

それに、お彩の心には別の男が棲んでいる。滅多と逢うこともないあの男、時折風のようにお彩の前に現れる謎の男にこそ、お彩は惚れているのだ。
物想いに沈むお彩を、伊勢次がじっと見つめていた。行灯の火影が伊勢次の横顔を照らし出している。いつもは少年のような無邪気を残す横顔に暗い翳が落ちていて、それは伊勢次をまるで違う男のように見せていた。
伊勢次は少しの逡巡を見せ、思い切ったように言った。
「お彩ちゃん、誰か他に好きな男がいるのか?」
まるで胸の内を見透かすかのような台詞に、お彩は雷に打たれたような衝撃を受けた。
重たい静けさが二人をすっぽりと包む。短い沈黙が永遠に続くかと思われた。
物想いに沈むお彩を、伊勢次がじっと見つめていた。行灯の火影が伊勢次の横顔を照らし出している。いつもは少年のような無邪気を残す横顔に暗い翳が落ちていて、それは伊勢次をまるで違う男のように見せていた。
伊勢次は少しの逡巡を見せ、思い切ったように言った。
「お彩ちゃん、誰か他に好きな男がいるのか?」
まるで胸の内を見透かすかのような台詞に、お彩は雷に打たれたような衝撃を受けた。
重たい静けさが二人をすっぽりと包む。短い沈黙が永遠に続くかと思われた。

