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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐

お彩は茜色に染まった雲がひろがる夕焼け空を振り仰いだ。
風が吹いて、一房の髪がお彩の白い頬にかかると、男はそれを手でそっと払った。
夕陽に染め上げられた風景の中で、お彩の横顔もその色を映し出していた。二人を見下ろす楓の樹が清々しい緑陰を投げかけている。甘く執拗な初夏の息吹に誘われて、男の中で抑え込んでいたものがふと頭をもたげたようであった。
男の手が躊躇いがちに伸びた。次の瞬間、お彩はふわりと抱きしめられ、再び男の腕の中にいた。我に返れば、互いの息遣いさえ聞こえそうなほどの場所に、男の美貌が迫っていた。
風が吹いて、一房の髪がお彩の白い頬にかかると、男はそれを手でそっと払った。
夕陽に染め上げられた風景の中で、お彩の横顔もその色を映し出していた。二人を見下ろす楓の樹が清々しい緑陰を投げかけている。甘く執拗な初夏の息吹に誘われて、男の中で抑え込んでいたものがふと頭をもたげたようであった。
男の手が躊躇いがちに伸びた。次の瞬間、お彩はふわりと抱きしめられ、再び男の腕の中にいた。我に返れば、互いの息遣いさえ聞こえそうなほどの場所に、男の美貌が迫っていた。

