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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第9章 第四話 【ほたる草】 一

結局、小巻はその日から「花がすみ」に再び居続けることになった。その日の夕刻、喜六郎までがあまりに浮かぬ表情なのをお彩は案じて控えめに問うた。
小巻は二階の嫁入りまで使っていたという部屋にいて、敬次郎に乳を含ませている。
店の方は夕方、再び仕事帰りに夕飯を食べにくる客たちで混み合う前のひとときの静けさに包まれていた。
お彩が訊ねた時、喜六郎は板場で夕方に出す料理に備えての仕込みをしていた。
「旦那さん、こんなことをお訊ねするのは出過ぎているとは思うんですけど、小巻さんの様子があんまりいつもと違うから、心配で。何かあったんですか」
刹那、喜六郎の背中に緊張が走った。短い沈黙の後、喜六郎が背中を向けたままポツリと言った。
小巻は二階の嫁入りまで使っていたという部屋にいて、敬次郎に乳を含ませている。
店の方は夕方、再び仕事帰りに夕飯を食べにくる客たちで混み合う前のひとときの静けさに包まれていた。
お彩が訊ねた時、喜六郎は板場で夕方に出す料理に備えての仕込みをしていた。
「旦那さん、こんなことをお訊ねするのは出過ぎているとは思うんですけど、小巻さんの様子があんまりいつもと違うから、心配で。何かあったんですか」
刹那、喜六郎の背中に緊張が走った。短い沈黙の後、喜六郎が背中を向けたままポツリと言った。

