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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第2章 第一話-其の弐-

父と離れて暮らし始めてもう一年になるが、その想いは薄れるどころか、逆に離れていれば余計に募るだけだ。父が他の女と懇ろになっていればと願う反面、その一方で父がその腕に他の女を抱いていることを想像しただけで、息苦しさに耐えきれない。それが嫉妬だと、お彩は判っていた。
あの男は父の面影を一瞬でも忘れさせてくれる存在になっていた。男のことを考えているときだけ、お彩は父を忘れることができた。そして、お彩自身、一日の中で男のことを考える時間が父を想う時間より長くなりつつあることに気付かないでいた。
その日、急に降り出した雨にお彩は眉をひそめながら、店の後片づけをしていた。たった今帰ったばかりの客の器を厨房へ運び、手早く洗う。主の喜六郎は煙草を買いに近くまで出てくると言って、留守にしていた。この雨では恐らく客足もあまり期待はできないだろう。お彩は喜六郎が早く帰ってくることを祈った。
あの男は父の面影を一瞬でも忘れさせてくれる存在になっていた。男のことを考えているときだけ、お彩は父を忘れることができた。そして、お彩自身、一日の中で男のことを考える時間が父を想う時間より長くなりつつあることに気付かないでいた。
その日、急に降り出した雨にお彩は眉をひそめながら、店の後片づけをしていた。たった今帰ったばかりの客の器を厨房へ運び、手早く洗う。主の喜六郎は煙草を買いに近くまで出てくると言って、留守にしていた。この雨では恐らく客足もあまり期待はできないだろう。お彩は喜六郎が早く帰ってくることを祈った。

