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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第12章 第五話 【夏霧】 其の壱

そんな気持ちもあって、おきみに少し休んでゆかないかと誘ってみたのだが、おきみは薄く笑っただけであった。
「良いんですよ。あの人は私の顔なんぞ今更見たくはないでしょうから」
おきみは呟くと、自嘲気味に言った。
「未練でごさんすね。私は今でも旦那さんを忘れられずにいる。だから、嫌われているのを知りながら、こんな風についふらふらとあの人に逢いにきちまうんですよ。もう、とっくの昔にあたしたちの縁の糸は切れてるっていうのに、とんだお笑い草ですよね」
そのあまりにも儚げな表情に、お彩は胸をつかれた。
「今日は承平ちゃんは一緒ではないのですか」
おきみの言葉に何と応えることもできず、お彩は承平の名を口にした。おきみの顔にまた笑みが戻った。
「良いんですよ。あの人は私の顔なんぞ今更見たくはないでしょうから」
おきみは呟くと、自嘲気味に言った。
「未練でごさんすね。私は今でも旦那さんを忘れられずにいる。だから、嫌われているのを知りながら、こんな風についふらふらとあの人に逢いにきちまうんですよ。もう、とっくの昔にあたしたちの縁の糸は切れてるっていうのに、とんだお笑い草ですよね」
そのあまりにも儚げな表情に、お彩は胸をつかれた。
「今日は承平ちゃんは一緒ではないのですか」
おきみの言葉に何と応えることもできず、お彩は承平の名を口にした。おきみの顔にまた笑みが戻った。

