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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第12章 第五話 【夏霧】 其の壱

その男の到来を合図とするかのように、数人連れ立った、これは人足らしい格好の男たちがどやどやと入ってきて、店は一度に賑やかになった。
その次に入ってきた客の顔を見て、お彩は微笑んで手を振った。
「いらっしゃい」
左官の伊勢次である。かねてから「花がすみ」の常連であり、お彩に惚れている。十七のお彩より四つ年上で、丸顔は年に似合わず子どもっぽく見えるが、存外に男気もあるし、何より誠実である。お彩も既に伊勢次の想いは本人から打ち明けられて知ってはいるけれど、今のところ、所帯を持たないかという問いには、はっきりとした返答はしていない。
その次に入ってきた客の顔を見て、お彩は微笑んで手を振った。
「いらっしゃい」
左官の伊勢次である。かねてから「花がすみ」の常連であり、お彩に惚れている。十七のお彩より四つ年上で、丸顔は年に似合わず子どもっぽく見えるが、存外に男気もあるし、何より誠実である。お彩も既に伊勢次の想いは本人から打ち明けられて知ってはいるけれど、今のところ、所帯を持たないかという問いには、はっきりとした返答はしていない。

