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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第2章 第一話-其の弐-

伊勢次は申し訳なさそうに言う。
「誓って言うが、盗み聞きをするつもりは毛頭なかった。これだけは信じてくんねえ。先刻、あいつが出てきたのをひとめ見たが、何か胡乱な奴だったな」
伊勢次は小首を傾げた。
「確かに風体はお店者、いや、ちゃんとしたお店の主人といっても通るほどだけど、得体の知れねえ翳のようなものがまとわりついてる。あんな野郎と拘わり合うと、ろくなことがねえと相場が決まってらあ」
伊勢次は滔々と喋る。
「―止めて!」
刹那、お彩は叫んでいた。伊勢次が愕いたような眼を向けているのにも頓着せず、お彩は続けた。
「どうして、そんな風に決めつけるの。あの人がどこで何をしている人なのか、私たちは何一つ知らないのよ。それなのに、見かけだけで判断するのは良くないわ。それに、あの人の眼、淋しそうだった」
「誓って言うが、盗み聞きをするつもりは毛頭なかった。これだけは信じてくんねえ。先刻、あいつが出てきたのをひとめ見たが、何か胡乱な奴だったな」
伊勢次は小首を傾げた。
「確かに風体はお店者、いや、ちゃんとしたお店の主人といっても通るほどだけど、得体の知れねえ翳のようなものがまとわりついてる。あんな野郎と拘わり合うと、ろくなことがねえと相場が決まってらあ」
伊勢次は滔々と喋る。
「―止めて!」
刹那、お彩は叫んでいた。伊勢次が愕いたような眼を向けているのにも頓着せず、お彩は続けた。
「どうして、そんな風に決めつけるの。あの人がどこで何をしている人なのか、私たちは何一つ知らないのよ。それなのに、見かけだけで判断するのは良くないわ。それに、あの人の眼、淋しそうだった」

