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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第15章 第六話 【春の雨】 其の弐

あの二人は、近頃の若い者には珍しいほど人が好い。伊勢次は陰日なたなく真面目に働くし、何より誠実だ。浮ついたところもないし、遊廓に行ったという話も聞かない。一方、お彩はこの二年と半年ほどの間、ずっとその働きぶりを見てきたから、その気性の素直さやくるくるとよく働くことは保証済みだ。おまけにあの器量だから、小巻がいなくなった後の「花がすみ」の看板娘としても申し分ない。
喜六郎はいずれ、お彩を養女にしても良いとまで考えていた。もとより、この話はまだ喜郎の胸の内だけのことで、お彩にも小巻にでさえ話してはいない。だが、一人娘の小巻が老舗の大和屋に嫁いで、既にその跡取りまで生んだ今、「花がすみ」は喜六郎一代で終わる。
喜六郎はいずれ、お彩を養女にしても良いとまで考えていた。もとより、この話はまだ喜郎の胸の内だけのことで、お彩にも小巻にでさえ話してはいない。だが、一人娘の小巻が老舗の大和屋に嫁いで、既にその跡取りまで生んだ今、「花がすみ」は喜六郎一代で終わる。

