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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第17章 第七話 【雪花】 其の弐

そう思いながらも、あの台詞を囁いたときの男の瞳には嘘はなかったと、いまだに確信めいた想いを抱いているお彩であった。
馬鹿だ、自分は大馬鹿だと、お彩は大粒の涙を流しながら、帰り道を辿った。近所の八百屋まで買いだしにに出かけたはずのお彩の帰りがあまりにも遅いことに、喜六郎はさぞ気を揉んでいるに違いない。それでも、今日ばかりは、お彩は一目散に「花がすみ」に帰る気にはなれず、わざとのろのろとした足取りで帰り道を辿った。
途中ですれ違った武家の奥方らしい二人連れがお彩を怪訝そうに見て、通り過ぎてゆく。どうやら、どこかの旗本のお屋敷の姑と若い嫁らしかったが、二人の婦人はお彩を見ると、顔を寄せ合って内緒話をしている風だった。
その視線には、あからさまな好奇と侮蔑が現れている。
馬鹿だ、自分は大馬鹿だと、お彩は大粒の涙を流しながら、帰り道を辿った。近所の八百屋まで買いだしにに出かけたはずのお彩の帰りがあまりにも遅いことに、喜六郎はさぞ気を揉んでいるに違いない。それでも、今日ばかりは、お彩は一目散に「花がすみ」に帰る気にはなれず、わざとのろのろとした足取りで帰り道を辿った。
途中ですれ違った武家の奥方らしい二人連れがお彩を怪訝そうに見て、通り過ぎてゆく。どうやら、どこかの旗本のお屋敷の姑と若い嫁らしかったが、二人の婦人はお彩を見ると、顔を寄せ合って内緒話をしている風だった。
その視線には、あからさまな好奇と侮蔑が現れている。

