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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第18章 第七話 【雪花】 其の参

お彩が次の言葉を待っていると、陽太は笑顔を見せた。
「私は子どもの頃、甚平店に住んでいたんだ」
お彩は予期せぬ話に仰天した。
「陽太さんが甚平店に? 信じられないわ」
陽太が悪戯っぽく微笑んだ。
「私が鋳掛け屋の倅だということは、いつか話したと思うがな」
「ええ、そのお話は聞きました」
お彩が素直に頷くと、陽太は話を続けた。
「私は甚平店で生まれ育った、私の両親は甚平店に住んで、鋳掛け屋をしていたのだよ。これは紛れもない真実の話さ。お絹さんも丁度その頃、同じ裏店に住んでいて、ガキ大将だった私を弟のように可愛がってくれた。私の方は、お絹さんにいっぱしに惚れているつもりだったが、あの女(ひと)には、てんで通じてなかった。ま、それも当たり前と言えば、当たり前だがね、当時の私はまだ十かそこらの本物のガキだったから」
「私は子どもの頃、甚平店に住んでいたんだ」
お彩は予期せぬ話に仰天した。
「陽太さんが甚平店に? 信じられないわ」
陽太が悪戯っぽく微笑んだ。
「私が鋳掛け屋の倅だということは、いつか話したと思うがな」
「ええ、そのお話は聞きました」
お彩が素直に頷くと、陽太は話を続けた。
「私は甚平店で生まれ育った、私の両親は甚平店に住んで、鋳掛け屋をしていたのだよ。これは紛れもない真実の話さ。お絹さんも丁度その頃、同じ裏店に住んでいて、ガキ大将だった私を弟のように可愛がってくれた。私の方は、お絹さんにいっぱしに惚れているつもりだったが、あの女(ひと)には、てんで通じてなかった。ま、それも当たり前と言えば、当たり前だがね、当時の私はまだ十かそこらの本物のガキだったから」

