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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第20章 第八話 【椿の宿】 其の弐

【其の弐】
静まり返った部屋の中で、お彩のくぐもった声がかすかに洩れた。ひそやかな衣ずれの音がかえって小座敷の中で繰りひろげられている男女の営みを彷彿とさせる。
紅絹の布団にうつ伏せになったお彩の上に市兵衛が覆いかぶさっている。お彩はまるで失神したかのように顔を夜具に押しつけて、微動だにしない。市兵衛がまだ荒い息を吐きながら、お彩から離れた。お彩の豊かな黒髪を愛おしげに撫で、市兵衛が耳許で囁いた。
「良かった。―逢う度に良くなる」
やがて、お彩がそろそろと身体を起こした。
市兵衛はお彩を背後から抱きしめ、再び熱い吐息と共に囁きを繰り返した。
「次はいつ逢える?」
静まり返った部屋の中で、お彩のくぐもった声がかすかに洩れた。ひそやかな衣ずれの音がかえって小座敷の中で繰りひろげられている男女の営みを彷彿とさせる。
紅絹の布団にうつ伏せになったお彩の上に市兵衛が覆いかぶさっている。お彩はまるで失神したかのように顔を夜具に押しつけて、微動だにしない。市兵衛がまだ荒い息を吐きながら、お彩から離れた。お彩の豊かな黒髪を愛おしげに撫で、市兵衛が耳許で囁いた。
「良かった。―逢う度に良くなる」
やがて、お彩がそろそろと身体を起こした。
市兵衛はお彩を背後から抱きしめ、再び熱い吐息と共に囁きを繰り返した。
「次はいつ逢える?」

