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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第20章 第八話 【椿の宿】 其の弐

「次はいつ逢えるかと訊いてるんだ」
市兵衛の苛立ちが増すと共に、その手の動きもよりいっそう烈しさを増す。市兵衛がついに焦れて声を大きくした時、お彩は市兵衛の手をさりげなく外した。思いがけぬ反撃にあい、市兵衛の切れ長の双眸がスと細められた。
その日、お彩は朝からずっと休みを取っていた。喜六郎には父の許へゆくからと言って、丸一日の休みを貰ったのだ。
それは他ならぬ市兵衛に求められてのことであった。二月の終わりに逢った時、市兵衛がどうでも次は一日中、二人だけで過ごしたいと言ったのである。もちろん、初めの中、お彩はやんわりと拒絶した。
市兵衛の苛立ちが増すと共に、その手の動きもよりいっそう烈しさを増す。市兵衛がついに焦れて声を大きくした時、お彩は市兵衛の手をさりげなく外した。思いがけぬ反撃にあい、市兵衛の切れ長の双眸がスと細められた。
その日、お彩は朝からずっと休みを取っていた。喜六郎には父の許へゆくからと言って、丸一日の休みを貰ったのだ。
それは他ならぬ市兵衛に求められてのことであった。二月の終わりに逢った時、市兵衛がどうでも次は一日中、二人だけで過ごしたいと言ったのである。もちろん、初めの中、お彩はやんわりと拒絶した。

