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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第3章 第一話-其の参-

そういえば、徳全和尚がこよなく菊の花を愛し、自らもたくさんの花を育てているのだと聞いたことがある。ならば、この花たちも和尚の丹精したものなのか。
紫、紅、黄、白と色とりどりの眼にも彩な様々な色、種類の菊花がまるで庭を海のように埋め尽くしている様は圧巻ともいえた。
一面の菊の花に、霜月のやわらかな陽が注いでいる。光は色とりどりの花を染め、光はまた花々に染め上げられて、座敷にまで流れてきた。雑多な菊の色に染まった光の渦に思わず酔いしれそうになり、軽い目眩を憶えた。お彩はこめかみを手で押さえた。
「徳全和尚は私の子どもの頃、学問の師であったのですよ。幼い時分からよくここへは通いましたから」
男はさらりと言うと、お彩を見つめた。
あの眼だとお彩は思った。静かだけれど、深い孤独と憂愁を湛えた瞳。
―あなたは、どうしてそんな哀しい眼をしているのですか。
紫、紅、黄、白と色とりどりの眼にも彩な様々な色、種類の菊花がまるで庭を海のように埋め尽くしている様は圧巻ともいえた。
一面の菊の花に、霜月のやわらかな陽が注いでいる。光は色とりどりの花を染め、光はまた花々に染め上げられて、座敷にまで流れてきた。雑多な菊の色に染まった光の渦に思わず酔いしれそうになり、軽い目眩を憶えた。お彩はこめかみを手で押さえた。
「徳全和尚は私の子どもの頃、学問の師であったのですよ。幼い時分からよくここへは通いましたから」
男はさらりと言うと、お彩を見つめた。
あの眼だとお彩は思った。静かだけれど、深い孤独と憂愁を湛えた瞳。
―あなたは、どうしてそんな哀しい眼をしているのですか。

