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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第23章 第十話 【宵の花】 其の壱

お彩は江戸でも随一と謳われる大店「京屋」の内儀である。その良人は主の京屋市兵衛だ。京屋は大店にして老舗の呉服太物問屋であり、当代の市兵衛で数えて六代目になる。初代が京都から出てきて商売を始めたのが始まりで、今も京から直に仕入れた品物しか置かない。多少値は張っても品質が良いものを扱うということで、多くの客からの信用を得ていた。が、その半面、客層はやはり相応の商人の内儀や高禄の武士の内室といった、いわゆる上層階級の身分の者に限られている。
お彩のように貧しい裏店で生まれ育った娘には本来ならば、生涯手の届くどころか、敷居をまたぐこともない場所であった。それがどういうわけか、京屋の六代目当主市兵衛の女房となり、お彩は今、ここにいる。
お彩のように貧しい裏店で生まれ育った娘には本来ならば、生涯手の届くどころか、敷居をまたぐこともない場所であった。それがどういうわけか、京屋の六代目当主市兵衛の女房となり、お彩は今、ここにいる。

