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第23章 第十話　【宵の花】　　其の壱

　江戸ほどの大都会では日々、様々な事件が起こる。瓦版屋はその大小の出来事を面白おかしくかき立て、人々はまたそれを競い合うようにして買い求め貪り読む。そんな中では京屋市兵衛の結婚も確かに大きな世間的関心事には相違なかったけれど、他にも江戸市民の好奇心を刺激する事件には事欠かなかった。
　お彩は、それほどに世間の注目を集め京屋の内儀となった。「花がすみ」の客として来た市兵衛と出逢ってから、実に四年の年月が流れていた。だが、五年越しの恋を実らせて晴れて世間にも許された夫婦になったというのに、お彩の心は晴れなかった。