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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第23章 第十話 【宵の花】 其の壱

今宵もまた、朝帰りなのかと思えば、心が沈む。お彩は磨き抜かれた廊下を辿り、与えられている居室に戻った。京屋にはあまたの奉公人がおり、お彩がすることといえば取り立てて何もない。何か自分にも手伝うことがあればと何度か女中頭に言ったのだが、その度に迷惑そうな顔をされたので、お彩は言うのを止めた。
お彩が与えられているのは京屋の主人とその家族が住まう母屋で、これはむろん、大勢の使用人たちが棲むのとは別棟になっている。もっとも、家族とはいっても、京屋には現在、主人である市兵衛とその妻であるお彩しかいない。市兵衛の居間はまた別にあり、夜、夫婦が寝む寝室としては、お彩の居間の続きになった小座敷が使われていた。
お彩が与えられているのは京屋の主人とその家族が住まう母屋で、これはむろん、大勢の使用人たちが棲むのとは別棟になっている。もっとも、家族とはいっても、京屋には現在、主人である市兵衛とその妻であるお彩しかいない。市兵衛の居間はまた別にあり、夜、夫婦が寝む寝室としては、お彩の居間の続きになった小座敷が使われていた。

