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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第25章 第十一話 【螢ヶ原】 其の壱

このきれいな眼を曇らせるような、どんな哀しい出来事がこの四月(よつき)ほどの間にお彩の身に起こったというのか。
「伊勢次さん、私、本当に何てお礼を言ったら良いのか」
呟くなり大粒の涙を流すお彩に、伊勢次は笑った。
「なに水臭えことを言うんだよ。お彩ちゃんはいつか言ってたじゃねえか。俺を兄貴のように思うんだって。それなら、お彩ちゃんは俺にとっちゃア、可愛い妹分だ。な、お彩ちゃん、俺だって、〝花がすみ〝の喜六郎さんだって、皆、いつだってお彩ちゃんの味方なんだぞ。京屋を出たって、お彩ちゃんに行く当てがないなんてことは断じてねえのさ。俺や〝花がすみ〟がこの世にある限り、俺たちのいるところがお彩ちゃんの帰る場所なんだよ。お彩ちゃんは一人ぼっちなんかじゃない。そのことだけは忘れねえでくんな」
「伊勢次さん、私、本当に何てお礼を言ったら良いのか」
呟くなり大粒の涙を流すお彩に、伊勢次は笑った。
「なに水臭えことを言うんだよ。お彩ちゃんはいつか言ってたじゃねえか。俺を兄貴のように思うんだって。それなら、お彩ちゃんは俺にとっちゃア、可愛い妹分だ。な、お彩ちゃん、俺だって、〝花がすみ〝の喜六郎さんだって、皆、いつだってお彩ちゃんの味方なんだぞ。京屋を出たって、お彩ちゃんに行く当てがないなんてことは断じてねえのさ。俺や〝花がすみ〟がこの世にある限り、俺たちのいるところがお彩ちゃんの帰る場所なんだよ。お彩ちゃんは一人ぼっちなんかじゃない。そのことだけは忘れねえでくんな」

