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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第4章 第二話【花影】-其の壱-

だが、誰もいないのか、家の中はしんと静まり返って物音一つ聞こえてこない。耳をじっと澄ませてみても、人のいる気配は伝わってこなかった。父はどこかに出かけているようだった。やはり突然、訪ねてきたのが悪かったのだと、お彩が小さな溜め息をついたその時、背後で聞き慣れた声が響いた。
「お彩、お前、帰ってきたのか?」
その声に、お彩はピクリと身を震わせる。
ずっと逢いたかった、けれどまた、逢いたくないとも思っていた父親であった。今日、父がどうやら留守らしいと知り、気負ってきただけに残念でもあったが、その落胆の中にはホッとする気持ちも正直混じっていた。
「おとっつぁん」
お彩は叫ぶなり、絶句した。言葉が続かない。言いたいことは山ほどあるのに、言葉が、気持ちが一挙に溢れ出してきて一つにまとまらないもどかしさがあった。
「お彩、お前、帰ってきたのか?」
その声に、お彩はピクリと身を震わせる。
ずっと逢いたかった、けれどまた、逢いたくないとも思っていた父親であった。今日、父がどうやら留守らしいと知り、気負ってきただけに残念でもあったが、その落胆の中にはホッとする気持ちも正直混じっていた。
「おとっつぁん」
お彩は叫ぶなり、絶句した。言葉が続かない。言いたいことは山ほどあるのに、言葉が、気持ちが一挙に溢れ出してきて一つにまとまらないもどかしさがあった。

