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Memory of Night 番外編
第2章 Episode of YOI
「わかるよー当たり前でしょっ」
普段の愛美の声は、どちらかと言えばぼそぼそしていて聞き取りづらい。大きな声を出すのは苦手だった。
けれども気付けば声のボリュームは自然と上がっていた。
忘れるはずはない、大切な親友からのおそらく一年ぶりくらいの電話。
愛美は弾むようにその名を呼んだ。
「本当に久しぶりだねぇ――明(あかり)ちゃん!」
固い機械越し、クスリと笑う明の声が耳に響いた。
菊池(きくち)明。それが彼女の本名だった。
――愛美は二年前に高校を転校した。明は転校する前に通っていた南風(なんぷう)高校の生徒で、さらに言えば中学から同級生だった。
それだけではない。明は、引っ込み思案で人付き合いがあまり上手くなかった愛美が、唯一素を見せられる相手だった。だから親友。
愛美はベッドに座りこみ、明ちゃんは元気してる? などと一言二言やり取りをする。
転校してから二年が過ぎ、ここでの生活にも慣れた。それでも、声を聞けば一瞬のうちに、心は昔に引き戻される。
転校する前のいろいろな思い出が次々と脳裏に蘇ってきて、意識しなくとも自然と声ははしゃいだものになっていた。
そうしてしばらくはしゃいだ気持ちでやり取りを繰り返していると、不意にある疑問が湧いた。