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Memory of Night 番外編
第2章 Episode of YOI
愛美はいつも、不思議な気持ちで彼を見ていた。
それはもしかしたら恋愛感情などではなく、ただの物珍しさや憧れなのかもしれないけれど、気付けば視線は自然と彼を追っていた。
愛美にとって、初めて芽生えた感情に違いなかった。
(結局一度も話せなかった)
残念ながら、中学から今日まで彼とクラスは別々のまま。そういう縁には恵まれなかった。
クラスなんて構わずに話しかけていた子もいたけれど、そんな度胸自分にはなかった。
引っ込み思案で内弁慶な自分には、きっと彼の取り巻きにだってなれやしない。
今でさえ、あんなに綺麗な顔で見つめられると際立った特徴も誇れるポイントも何もない自分の顔が、酷くみすぼらしく思えてしまう。
(でももうどうせ引っ越すし)
愛美はひっそりとため息をついた。
今回急に引っ越すことになったのは、祖母が具合を悪くしたため。
祖母はもうそれなりの年だった。愛美が高校を卒業したら遠い地で一人暮らしをしている祖母のもとへ行き、遅かれ早かれ同居するということは、家族の間ではすでに決まっていたことなのだ。
その時期がほんの少し早くなっただけだ。