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Memory of Night 番外編
第2章 Episode of YOI
スカートではなかったので、その人物が男子生徒だということだけがかろうじて認識できる。
どうやら長机の上に浅く腰かけているらしい。床についたつま先がわずかに浮いていた。
(どうして……こんなとこにあんな格好で……)
女生徒の格好は、明らかにおかしい。
人よりやや鈍感で、愛美は物事を推測するのが苦手な性分だったが、この状況にはさすがに察しがついた。
覗いてしまったことを後悔したが、もう遅い。人気(ひとけ)のない場所と時間を狙ってこんな大胆なことをしているのが誰なのか、確かめたい衝動にかられた。
位置が悪く、顔を視認することができないのがもどかしい。
いけないことと知りつつも、愛美はドアにそっと右耳を当てた。
息を殺し、二人の会話を盗み聞こうと試みる。
「……三万、でいいんだよね?」
かろうじて聞きとれたのは、女生徒の声だけだった。
「わ……ってる。誰にも言わないよぉ。だからまた……よ」
それでも、意味がどうにか読み取れる程度。
耳に意識を集中しても、男子生徒の言葉は聞き取れなかった。声がわずかに届く程度だ。