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Memory of Night 番外編
第2章 Episode of YOI
もう一度ガラス越しに中を覗こうとして、足音に気付いた。
中のどちらかがドアに近づいてきているらしい。
愛美はとっさにドアから離れ、生物室の中に入った。なるべく音を立てないように、素早く辺りを見まわす。
理科準備室の古いスライド式のドアが、ガラガラと音を立てた。
「またねー」
女生徒の声が、今度ははっきりと愛美の鼓膜を震わせる。
玄関も階段も、生物室の前を通らなくては辿り着けない。
隠れなければ、自分が二人の会話を盗み聞きしていたこともバレてしまう。
(どうしよう……っ)
廊下を歩き出す足音が響き始め、愛美はとっさに生物室のドアの陰に身を潜めた。
膝をたたみ、両腕を抱きしめるような体勢で息を殺し、じっと足音が通り過ぎるのを待つ。
ドアは開けっ放しのままだったけれど、廊下側からは死角になっていて、生物室をのぞき込まなければ見えない位置のはずだ。
そうして姿を現したのはやはり女生徒の方だった。
わずかに乱れた服装で、小走りに生物室の前を通り過ぎていった。
一瞬だけ見えた横顔。見覚えはあったので同じ学年だとは思うが、名前は出てこなかった。