この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night 番外編
第2章 Episode of YOI
静まり返った室内に、愛美が立てた物音だけがやけに大きく響く。
「きりは……」
愛美は顔を上げ、意を決したように叫んだ。
「わたしにも……さっきの子と同じことして!」
自分でも驚くくらいに大きな声が出た。
大胆なことを言っている自覚はあったけれど、ここで怯んでいる場合ではない。
きっとこれが最後のチャンスなのだ。
今を逃したら彼の側には行けない。
憧れだって、恋心だって、宵への気持ちがなんであろうとそんなものはどうでもよかった。
愛美は身を乗り出すようにして宵の瞳を見据え、さらにたたみかける。
「してくれたら、さ……さっきのこと誰にも言わないからっ」
愛美の脳裏に、先ほど廊下を駆けていった髪の長い女生徒の顔が浮かぶ。
隣の教室で何が行われていたのか、詳しくはわからない。けれども二人の格好から、性的な何かであることはわかった。
軽いやりとり。金銭の受け渡し。
きっと二人は恋仲じゃない。
それなのに、あの女生徒だけが彼に触れられるのはずるい。
――ずるい。
「脅す気?」
だがふと頭上で響いたのは、酷く冷たい声だった。