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Memory of Night 番外編
第2章 Episode of YOI
愛美は右膝をどうにか窓枠に乗せた。
よじ登ろうとする様は、自分でもさぞ滑稽な姿だろうと思う。
左足も乗せようとしたができなかった。
腕が痺れて自分の体重を支えきれなくなったのだ。
「……っ」
悲鳴はどうにか押し殺したが、愛美の体は床の上に落ちてしまった。
思いきり尻餅をついてしまう。
また怒鳴られるのかと思って隣に立つ宵を見上げると、宵は呆れたように頭を抑えている。
「……本当に腕の力弱いんだな。もう老人レベル」
それはさすがに言い過ぎだろうと思ったけれど、反論する度胸はなかった。
立ち上がろうする愛美の耳に、今度は不穏な足音が響き始める。
廊下を歩く教師の足音だ。
その音がまた小さくなって消えていく。
おそらく化学室から生物室に移動したのだろう。
「わたしここに残るから、大河くん、窓から逃げていいよ」
愛美は尻餅をついたまま、ぽつりと言った。
「一人でここにいるだけなら、ちょっと理由聞かれて怒られるだけで済むと思うし。……無理を言って大河くんのこと誘ったのわたしの方だし。……ごめんね。心配しなくても、ここで見たこと誰にも言わないから」