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Memory of Night 番外編
第2章 Episode of YOI
ほっと胸をなで下ろしたようなつぶやきが聞こえるが、愛美はそれどころではなかった。
息を止めるのも限界で、首を振りながら必死に宵の腕を叩く。
彼はようやく状況を把握してくれたらしく、慌てて愛美の口元を覆っていた手を放した。
「ぷはッ」
まなじりに涙を浮かべ、胸の辺りに右手を添えて何度もげほげほと咳き込む愛美。
「ごめん、つい」
「ひど……、鼻水、出ちゃう……っ」
言葉が続かず、愛美は鼻をすすってぜーはーと荒い呼吸を繰り返す。
宵はそんな愛美の背中をさすってくれるが、口から飛び出した言葉は非道極まりなかった。
「桐原がやかましいから」
「えー……」
その言い草もどうかと思う。
愛美は宵の姿を横目にぷうと頬を膨らませた。
ほとんど無意識の行動だったから、はっと気付いて慌てて顔を背ける。
(子供っぽい)
急に自分のとった態度が恥ずかしくなった。
宵が灰色の瞳を見開き、愛美の顔をうかがう。
酸欠とドキドキで真っ赤になった顔を見られるのも耐えられなくて、さらに愛美は顔を背けた。
あからさまな愛美のその行動に、宵はしばらくくつくつと笑っているだけだった。