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Memory of Night 番外編
第2章 Episode of YOI
我ながら、なんて自意識過剰なことを言っているのだろうと思う。
ただ、彼が時折見せる切なげな顔は、明らかに自分に向けられたものではないのだ。
自分を通して一体誰の面影を見ているのか、どうしても気になった。
宵は鞄を取ろうと低くしていた姿勢を再び戻した。
愛美の側に立ち、愛美の瞳を見つめ返す。
「世話の焼ける人、か。……まぁ、いるにはいるけど」
そこで宵は一旦言葉を濁した。
迷っている素振りを見せる宵に、愛美が問いかける。
「彼女さん……とか?」
本当は遠慮すべき質問なのかもしれないが、愛美の言葉は止まらない。
彼に彼女がいる、という噂を耳にしたことはなかった。
でも、自分がそういうものに疎い自覚もある。
ただ知らないだけかもしれない。
気がつけば、愛美は身を乗り出して、必死な表情で宵を見上げていた。
あまりの食いつきっぷりに、宵がわずかに驚いたような顔をする。
それでも愛美はめげずに、暗い中に薄く輝く灰色を見つめ続けた。
「彼女なんかいねーよ」
やがていくらか間を置いて、宵がそう返答する。