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Memory of Night 番外編
第2章 Episode of YOI
それでもきっと自分の及びもつかないものを、彼が背負っているのだということだけはわかってしまった。
愛美はふっと体の力を抜いた。
――本当は、彼の支えになりたかった。
ほんの一部分ではなくて、もっと彼の素顔を知りたいという気持ちもまだ確かにあった。
(でももういいや)
愛美は心の内でそっとため息を吐き出した。
それは諦めというよりは、納得に近い。
自分の中で、綺麗にけじめがついてしまった。
彼を支えるのは、おそらく自分の役割じゃない。
自分には無理だろうとも思えた。
――いつか、そんな強い人が彼の側に現れてくれたらいい。
ふとそんな願いが、愛美の心に湧き上がる。
愛美は宵ににっこりと微笑んでみせた。
「土曜日の穴埋めはいらない。もう、十分だから。バイトのない時間は、体をいっぱい休めて」
愛美は初めて緊張のない自然な顔で笑えたような気がした。
「……そっか。ありがと」
そう応えて、宵が学生鞄を手に取る。
肩に掛けながら、もう一方の手を愛美に差し出した。
「え……」
首を傾げる愛美に、薄い笑みを返してくれる。
「もう暗いし、送るよ」
「ありがとう」
白い手に促され、愛美はその手を掴んで立ち上がり、はにかむように笑ってそう礼を言った