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その恋を残して
第1章 好きにならないで!
「なあ――今日、ウチのクラスに編入生が来るってよ」
それは前の席の田口が、唐突に俺に言った言葉。
「ふーん。そっか」
俺は意に介さず、そんな生返事をする。それが何か、悪かったのだろうか?
ガン――と、世界一理不尽とも思える暴力が、俺の頭部を襲っていた。
「イテッえな……何すんだよ!」
「反応が薄い」
「し、知るか!」
小突かれた頭を押さえつつ、俺は田口を睨む。すると、田口は俺に顔を寄せ――
「女子だってよ……しかも、かなり可愛いらしい」
ニヤニヤしながら、小声で言う。
何でお前が、そんなことを知っているんだ? と、俺は田口の情報収集能力にだけは、一応は感心する。
しかしながら、この件に関しての興味は、先の反応が全てである。クラスに一人、知らない人間が増える――それだけのこと。例え、それが絶世の美女であろうが、俺にとってその事実に変更はない。
少なくとも俺に限って――一目見て、その瞬間に恋に堕ちるなどということは、あり得ない話であった。
「そう……良かったじゃん?」
何か言わねば収まらない雰囲気の田口に、とりあえず俺はそう言ってやる。
「チッ――つまんねえ奴」
舌打ちをしつつ、田口が前を向いた時――ガラッと、教室の扉が開いた。