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秘密の恋人
第12章 素顔
自宅のマンションに帰る。

鍵を開けて中に入るが、人の気配はない。
息子の隆行は、25歳の会社員だ。

隆行が小学校6年生の時、離婚した。
以来13年、男2人暮らしだ。

大学の頃から、隆行は彼女の家に入り浸り、今ではほぼ週末同棲のような生活を送っているようだ。平日は仕事が終われば帰ってくるが、週末に顔を見かけることは少ない。

お互いまだ若いのだから、相手のお嬢さんやご家族に迷惑さえかけなければ、私は特に何も言うつもりはない。

私は、別れた妻とは所謂、出来ちゃった、というヤツで。今風に言えば授かり婚、とかいうのだったか。
だから、結婚に際して悩む余地など無かった。

私は若かったが、若いなりに、精一杯家族を支えて行こうと心に決めていた。

だが、若さ故か、家族の精神的なサポートをしつつ仕事も頑張る、というマルチプレイは私には出来ず。
家族を支える為には仕事をするしかないのだと、家庭を顧みず仕事に没頭した。

順調に昇進も昇給もしたと思う。
だが、立場や報酬には当然のことながら責任も附随し、ますます家にいる時間は短くなった。

隆行の成長も、妻の変化も、そして家族の間に出来た溝にすらも。気付くことなく時を重ね….気付いた時にはもう、埋めようもない程に溝は深まっていた。
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