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きょうどうせいかつ。
第6章 ひめはゆっくり かくせいする。
「そうだわ。せめて口だけでも動かせるようにしてあげる」
しゅっと、糸が解けるように、今まで動かなかった口が、動くようになった。
口が、乾いている。
「姫……。あなたは……魔物、ですか?」
「んん? 違いますよ? 私はもともと、こんな性格なの」
「じゃあ、さっきまでのは……」
「演技? うーん、それもちょっと違うな……。ああ、そうそう、猫被ってた」
彼は、心の底から世界に失望した。
このままじゃ、確実に殺されてしまう。
姫の手によって。
「あ、残念ながら、あなたは殺しませんよ?」
「……っ! 何故?」
「言ったでしょう? あなたの力が必要なんです」
「まだ、そんな事を──っ」
勇者は、全身に『何か』が巻き付いているような気がした。
その『何か』は、力を弱める事なく、めきめきと勇者の全身を締め付ける。
「私の願いを否定しないでちょうだい」
「す……みませ……っ」
「いいわ。許してあげる」
勇者は、締め付けが終わったと同時に、金縛りからも抜け出した。
息があがっている。