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共犯者の微笑
第1章 読み切り短編
最後の手羽。
ふたりして、骨付き肉にしゃぶりつく。
きっとね、場末の焼き鳥屋さんでのマナーって、中座してお手洗いの鏡で紅を引き直さないことだと思うの。
鳥の脂にまみれて。店中に立ち込める煙と、お酒のにおいにまみれて。そこでふたりして、素の顔をさらけ出して夢中で串にかぶりつく。
こんな官能的な食事って、そう、ない。
きっとアメリカのバーベキューとかもそうなんだろうな、って思う。
骨に歯を立てて、手羽先の微かな肉片もこそぎとる。
彼の愛を、ひとっつもこぼさず全部吸い取っちゃうみたいに。
同じように最後の骨に名残惜しそうにかぶりついている人を、黙って見つめる。舌先を、わずかにカーブした手羽の骨に沿わせながら。
ほら、こうしてチロチロしてあげるね。
あとでいっぱい、愛してあげる。
何にも言わなくても、あの人は、それに気づき、微苦笑する。