この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
共犯者の微笑
第1章 読み切り短編
最初の突き出しはとりわさ。
ささみの切り口は、熱の通った白い表面に、レアなピンクの身。そこにグリーンの浅葱(あさつき)と、薫り高い海苔。そしてキリリとした摺りたてのワサビ。頬張ると、お口の中でしっとりの部分とむっちりの部分が溶け合って、とてもいい噛み応え。そして浅葱と海苔と、鼻をつくワサビのツーンが追っかけてくる。
ムム。
確かに、この店、美味しいかも。
しかしお皿に盛られてる、このグレイのパテ状のものはなぁに?
「食べてみれば判るよ」
お箸で取ったとりわさを、それにチョビットだけつけて。お口に入れてみる。深い香り。ん? なんだっけ、この味。もしかして、レバー?
「ご明察」
といって。レバーのパテ。うわぁ、すごい。言っちゃ悪いけどこんな店で、そんな気の効いたものがでてくるなんて!
彼はにっこり笑う。してやったり、のいつもの小憎らしい顔だ。
参ったなぁ。美味しいなぁ。突き出しからこれでは、結構キケンだなぁ。あんまり美味しいと、品を失っちゃいそうだなぁ。