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さくらホテル2012号室
第19章 さくらホテルのさくら


わたしは目を閉じる。
先生との日々が、映画のエンドロールのように、流れてゆく。ゆったりとした音楽をBGMにして。


わたしは、世間知らずの名もない女だった。
先生に会って、先生に触れて、少しは世界を広げることができた。名もないひとりの女であることに変わりはないけれど。


いや。
名は、ある。


わたしは先生の、女だ。
ここにいる限りずっと。
心の底で、ずっと。
先生の女だ。


手のひらを閉じて、桜貝を手の中に包み込む。
先生が消えてしまわぬように。わたしの中に留めておけるように。


ファンタジーを自分の中に持てる時、ひとは大人になれるのかもしれない。胸の中の桐の小箱に、ひとつまみの夢想を。儚い、想い出を。


わたしの頬を、一筋の雫が伝う。
でも、それ以上はない。
ひと粒だけ。


『もう泣くんじゃないですよ』


明日の朝、朝日が昇ったら。
ここを笑顔で出てゆける。
今だけ、この涙をこぼし終えたら。
先生を送り出せる。
静かに、弔(とむら)える。

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