この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
おんな小早川秀秋
第3章 秀俊修行

別室に通されたあきは、隆景と向き合う形で座らされる。聞きたい事は山ほどあるが、何から切り出すべきか。あきが悩んでいると、隆景の方から口を開いた。
「先程も話しましたが、あれは黒田官兵衛。豊臣との間を仲介する、毛利一門にとって最も重要な人物です」
「は、はい」
「彼は一応隠居の身ですが、それはあまりに優秀すぎて太閤から恐れられたため。家督を早く譲る事により野心のなさを主張したのです。実質、黒田家は彼の力で動いていると言っていいでしょう」
「そんなお方が、供もつけずにふらふらと歩いていたんですか?」
「そういう突拍子のない事をするから怖いのです。いいですか、あれは隠居しても、正直隠しきれない程強い野心の持ち主です。私が相手なら腹の内を読み切り相手も出来ますが、あなたはあれを信用してはなりませんよ」
親友、と語った割に、隆景の如水評は散々である。あきが苦々しい顔をしていれば、隆景も苦笑いした。
「もっとも、野心さえ除けば、彼ほど優しい武将はいませんよ。側室を持たず一人の妻を一途に愛し、部下は決して手打ちにせず、生活は倹約に励み贅沢をしない男でもあります」

