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おんな小早川秀秋
第5章 石田三成という男
見知った顔に安堵したのか、あきもようやく落ち着きを取り戻し涙を止める。三成はあきを横目で眺めながら、頼勝に文句をこぼした。
「それにしても……いくら似ているからとはいえ、女を影武者にするとは感心せんな。もし豊家の崩壊を企む悪漢が襲いでもしたらどうする。今の様子を見る限り、組み合いになれば簡単に葬られてしまうぞ」
「いや、それは山口の爺様が連れてきたから、俺はなぁ……それに、この伏見で何か企もうなんて考える奴はいないだろ」
「いない、と言い切れるのなら、こちらの仕事も減って助かるのだがな。どの道、女が影武者など務まらん、早く本人を呼び戻せ。それが無理でも、代わりの影武者を立てるべきだ」
するとあきは立ち上がり、力いっぱい首を振る。
「待ってください! 私、頑張ります! 秀俊様の影武者として、務めを果たします! ですから、代わりなど……っ」
「だが、少し男に触られたくらいで泣くような女に、一体何が出来る? 確かに今は戦など簡単には始まらん、しかし、有事がいつどこで起きるのかは分からんぞ」
「――っ、私は、女ではありません!!」