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おんな小早川秀秋
第4章 埋められない差
今の私の人生は、兄の手を握ってやれなかった事への贖罪のためにあるようなものです。兄の子である輝元を支え、誰が迫っても揺るがない盤石の毛利を作る事が、兄への弔いなのです。
そんな私の人生に、あなたのような若者を巻き込んでしまうのはあまりに身勝手で申し訳ない事です。しかし老い先短い私の我が儘を、どうか叶えてはくださらないでしょうか。
世の中は、ようやく争いの時代を終えようとしています。今回の養子縁組により、小早川家はますます政権に深く食い込む事になりました。乗っ取りとは言われますが、豊臣が毛利を重く見て引き入れようと考えた結果です。父、元就から始まった毛利は、もう少しで揺るがぬ存在となるでしょう。
一つだけ心配なのは、太閤が実子に執着するあまり、今まで築いた養子との絆を疎んじている事です。毛利が安泰だと語るためには、もう少し様子を見る必要があります。
そのためにも、あなたの助力が必要です。間を取り持つあなたがいなければ、私も豊臣の懐には入れません。血を見ぬ世のため、兄の愛したこの土地のため、どうか力を貸してください。